エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

のせてます、veroにいろいろ。アルバムは顔とエロです。※等価交換

その人からはジューシーな汗の香りがした。
身体のあちこちに顔を埋め、その匂いを脳裏に焼き付けた。
匂いが彼の存在の輪郭をはっきりとさせた。

 

「東京に来てからラブホ入るの初めてです」
坂道を登りながら彼はそう言った。
僕より年下の彼は背が高いわりに子どものようにあどけない顔をしている。少しぽっちゃりしたお腹の膨らみがキュートだと思った。
彼は期間限定の転勤で、福岡から上京してきたのだという。
ラブホ街はなぜ坂道に多いのだろうと思いながら、僕は立ち並ぶロマンティックな看板の数々を眺めた。

 

ホテルに入り、パネルから部屋を選ぶ。どの部屋も似たような作りだが、設備に故障がある部屋には注意書きが張られていた。
エレベーターに入る。照明が暗く、お互いの顔は見えない。部屋に入ると、ベットの横が広く鏡張りになっているのが目に飛び込んでくる。

ソファに座り、どちらからともなく手を繋ぐ。
Tシャツの上から胸のあたりを撫で、柔らかい感触を探す。その中の小さな突起を爪にかける。
円を描くように指の先で弄ぶ。甘い声で喘ぐ。布越しに唇を当て、固くなってきたそれを食む。
気持ちいい、と漏らす彼の顔は嬉しそうににやけていた。じっくりと乳首を愛撫した。
ズボンを脱がすとパンツの中で固くなったものはねっとりと先端を濡らしていた。
ベットに移動してお互い裸になる。彼のモノは太い系の巨根で、長さはないが亀頭も竿も僕のモノよりも二回りほど大きかった。
「全然大きさが違うね」そう言ってお互いのチンポを重ね合わせてしごいた。
「エロいね」と鏡に映る二人の姿を見ながら行為した。

 


行為が終わると一緒にお風呂に入った。薄暗くなったバスルームでぬるめのお湯に浸かった。
「男の人とあんまりやったことないんで、緊張しました」彼は言った。
「実は遠距離中の彼女がいて…。彼女には俺がせめる一方なんで、今日いっぱいしてもらって気持ちよかったです。」
「前の彼女なんて舐めたりもしてくれなくて…正直、入れるのが一番気持ちいいわけじゃないからあんまり楽しくないんですよね」
「でも、恋愛感情は男には向かなくて。子どもも欲しいし、地元に戻ったら結婚しようと思ってるんですよ」

「えー。彼女いるのダメじゃん。僕もさ、長く付き合ってる人がいるよ。お互い様かな。」
「やっぱりさ、女の人と結婚して子どもがいて、普通の家庭を築けることがさ、幸せって感じなんだよ。遊びすぎには注意しなよ」僕は笑いながら言った。

 

 

愛し愛される人がいても、そんなものでは皆飽き足らない。
彼は結婚したって男と交わり続けるだろうし、アナルはやったことないって言っていたけれど、そのうち入れたり入れられたりもして、前立腺だって性感帯になるかもしれない。
家に帰ったらパパ―と笑顔で駆けて迎えてくれる子どもがいて、家族で食べるカレーライスはどんなレストランで食べる料理よりも美味しくて幸福な味がする。
東京で素敵な男性と出会い、一緒に暮らし、同性パートナーシップを結んで、これで僕たちも結ばれたね、なんて言って二人でタキシードを着たフォトウエディングが飾られた寝室で抱き合って眠ったら、この世界で初めて孤独ではない気がした。
名前も知らない男とチンポしゃぶりあってお互いの我慢汁のしょっぱさを味わい、苦悶なのか快楽なのかどちらだか分からない、くしゃくしゃの顔に、唾液を流し込むようなキスを、兜合わせで射精したドロドロの快感は何にも代えがたく気持ちいい。
人生一度だからと言って全てを手に入れようとする僕も君も、愚かで狡くて、みんな騙しながら幸せになろうね。

 

 

生暖かいお湯の中で僕たちは手を握り合った。