エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

2021-01-01から1年間の記事一覧

陰部摩擦罪

「てか今日軽くエロいことしません?」 「はやく攻められたい!」 「まじすか。部屋散らかってますけどいいすか?」 一年ぶりに帰省した実家から帰る電車の中そんなメッセージに返信をしていた。都内に借りているアパートからは1時間ほど離れた場所に彼は住…

またどこかで

前を歩く男性を目で追う。紺色のポロシャツ、グレーのスラックス。シャツの上からでもズボンから少しだけはみ出たぜい肉が分かる。袖からのぞく二の腕、鷲掴みにして脇に鼻を寄せればどんなに匂いがするだろうか。男らしさを煮詰めたジューシーな体臭を想像…

ミンティアの食べ過ぎで舌が焼けた

大して更新されていないツイッターのタイムラインを読み返す。インスタグラム、ティックトック、ライブドアニュース、ユーチューブをぐるぐると巡る。オリンピックの不祥事、別に知らなくて良かった豆知識、コロナウイルス拡大のニュース、最新ゲームのプレ…

僕が夢みたいに過ごしてた時間も君は退屈してたんだね

出会い系アプリの紹介文を変えた。エロいことをできる人を募集する文章を付け加えた。今までは何となく恥ずかしいとか思ってたけど、もういいや、別に友達もいないし。寂しさは徐々に身体を侵食し穴を空けていった。その穴を誰かと淫らな事をすることによっ…

お姫様

「負けず嫌いだからさ、体育会系の職場だったときは飲み会で無理やり吐いてまで飲んでたよ」 ステーキをワインで流し込みながら彼はそう言った。 ベッドの上で彼は僕のことを王子様みたいだと言ってくれた。そんなはずはないのに。清潔そうにアイロンのかか…

To-morrow, and to-morrow, and to-morrow,

ティッシュペーパーを見ると赤い染みが広がっていた。久しぶりに見る血の鮮やかさに動揺した。ウケなんてしてないし、痛みは全くなかったので驚きながら水を流した。自分が老いていっているのを感じた。こうして一つ一つ死に近づいていくのだと思った。 僕よ…

ブリキの木こり

【命綱】「あんまり早く歩かないで」ホテル街を上る坂道で彼はそう言った。丸山町はこんな時期だからか思ったよりも人が少なかった。その日はとても寒くて、煌々と輝くネオンが吐いた白い息を照らした。「この前スキー行ったら転んじゃって、靭帯切っちゃっ…

甘え

写真で見るよりも老けて見えたけれど、白髪交じりのグレーの髪がセクシーだった。パーカーの上にノルディック柄の厚手のニットカーディガンを羽織っている。自動販売機でお茶を買っていた彼にはじめまして、と簡単に挨拶する。彼はどこか不機嫌そうな、不愛…