エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

生きるのが面倒くさくて赤信号駆けて渡った爽やかな朝

その人は背が高かった。やせ型の体形だけど、30代になって脂肪が付きはじめたのであろうラブハンドルが愛おしかった。
ほとんどクセのない黒髪は前髪を上げたアップバングでツーブロックの刈り上げられたうなじやもみ上げがセクシーだった。
僕なんか相手にされないだろうと思っていたけれど目が合って個室に入った。


彼は僕の背中を焦らす様に爪を立てて触った。ぞくぞくするように気持ちよさが身体を走った。
マスクを外してキスをする。舌が絡み合うと少しお酒の匂いがした。


「ごめんなさい」
恋人から昼頃に届いた、たった一言だけのLineメッセージが脳裏にちかちかと浮かんだ。
心当たりがないわけではない。しかし、何に対しての謝罪なのか、どうして恋人がそれを送ってきたのか、はっきりとした理由は分からなかった。
浴槽から溢れ続ける水、薄く濁った赤い湯舟に手首を切った死体が浮かんでいる。
大量のドラッグを酒で流し込んだ。死んでからずいぶんと時間がたっていたので、炬燵の温かさに反してそこに伏した彼の身体は冷たかった。
部屋の梁にかけられたロープに身を吊るしていた。浮いた足元には糞尿の水たまりができている。
僕が淫らな行為をしている間にも彼は死んでしまうかもしれない。そんな悍ましい想像をした。


「めっちゃエロいっすね。俺見られるの好きなんですよ」
そう言って彼は扉の鍵を外した。
仁王立ちする彼に跪いてフェラチオした。幾人かの人がその光景をちらちらと覗いていた。
やがて、別の男が個室に入ってきた。僕は片方の手で乳首を責め、もう片方の手でちんぽを扱き、口では別の男のちんぽをしゃぶっていた。
おちんちんの生臭い匂いがした。見上げると僕の相手をする二人の男は肩を組み合いキスしていた。
「見られるのやべぇっす」「このままビデオ回したいっす」
そうした役割をぐるぐると交代しながら、脳みそがとろけるような淫らな行為を繰り広げた。


「ぶっかけていいすか?」
そう言って二人分の精液が僕の顔面を濡らし、ねとねとした液体をティッシュで拭うとまた三人で身体を弄りあった。


もし恋人が家で死んでいたら、職場や警察への説明が面倒だろうなぁと思った。


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氷の張った湖で釣りをするときに氷上に穴を開けるときのように、おでこにもドリルで穴を開けた。
頭蓋骨にまで穴を開けるのは力が必要かと思いきや、押し当てていればあっさりと力の抜けるポイントがあり貫通したのが分かる。
そこに太目のストローを刺して脳汁を吸うというのが、タピオカブームの次に女子高生たちを熱狂させたブームだった。
ストローから脳を吸い上げる瞬間、ずぞぞという音を立てる。それがASMR動画としてTikTokで拡散され流行したらしい。
脳はわらびもちのような触感であまい豆腐のような味だという。トッピングでトリカブト入りの氷を入れるのが人気だ。

 

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発展場を出た後もなぜか発展場の匂いがすると思った。


【メモ】
・××ダス×ーできまる
・乳首のようないぼが背中にある人
・眉毛がほとんどない。フェラしてくれた。
・匂いのある唾液。ローション手コキするとすぐにいってくれた。


あ、これはマスクに染みついた匂いか。ローションと唾液が交じり合ったような、ほの甘い匂いを感じながら家路に着いた。


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A.その人はコックリングをしていた。
お互いの身体の形を確かめあうように、お互いを触りながら最後は一緒にいった。


B.卓球の水谷準選手を90kgくらいに太らせた感じの男。
重めの一重瞼がキュートだった。チンコは包茎で剥くと巨峰のようにつやつやの亀頭が姿を現した。
ふだん包茎の人はこのように、亀頭が輝くかのようにつやつやの場合があるなと見惚れてしまった。


C.「俺のアヘ顔みて」「俺いまブサイクな顔してる?」
白目をむきながら口をだらしなく開けて男は聞いてきた。
笑えそうで笑えなそうで笑えた。


D.爽やかなお兄さん。
金玉が性感帯だったので「気持ちいいねぇ」と言いながらたくさん責めた。
「若いのにエロいね」と言われたけど僕はそんなに若くない。


E.キスマークを付けてこようとしたり、入れていいかと聞いてきたりした。
ダメです。


F.マスクを取ると意外と口ひげが生えていた。
髭からは少しホームレスのような匂いがした。
フェラするのが好きで、喉奥にガンガン腰を振ると美味しいと言って喜んだ。

 

G.「右の乳首と左の乳首、どちらかと言うと、どっちのほうが感じると思う?当ててみて」
「うーん。右?」「あぁん」「うーん。左?」「あはぁん」
彼によると乳首のGスポットというものがあるらしく、舌でぺろぺろと舐めるとその一点でより雌らしく喘いだが、どちらのほうがより感じる乳首なのかはよく分からなかった。


総括
最近気づいた事実だが、僕は好みのタイプからちょっとキモイと思うくらいまでの人とならセックスできる。
12歳~55歳くらいまでのガリガリ~巨漢までわりと誰でもいける。


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何度かホテルで会っていた男から、自宅へ招かれたので1時間ほどかけて埼玉の奥のほうまで出向いた。
駅まで車で迎えに来てもらい、マンションの部屋に入ると東京ではなかなか気軽に借りれない広さだった。
クッションに蹲った毛むくじゃらの生き物が足元へと駆けてきた。
初対面にも拘わらず前脚を上げてぴょんぴょんと僕の周りを飛び跳ねた。


「こいつ人間大好きなんですよ。噛まないから安心して。シャワー浴びてくるから遊んで待っとってください」
部屋でソファに座る僕の手をぺろぺろと舐めたり、あるいは覆いかぶさりながら顔を舐めてきた。
動物からこんなに親密に接されるのは初めてだった。
犬は服をきていた。おむつもしていた。人間の乳児が獣にされているようで気持ち悪かった。
僕に人間以外の生き物が可愛いと思える感性がないことに少し悲しくなったので、ソファから立ち上がり部屋の隅でスマホを眺めていた。


シャワーからでた男と寝室にいき裸になった。クーラーがなかなか効かず寒かった。
男が僕のチンポをしゃぶっているとき、その姿が犬と重なって嫌な気持ちになった。


ドックフードをかじった舌で満遍なく舐められた僕の指を、その飼い主である男も舐めていた。
男の顔をじっと見つめる。何度か会ったはずなのに、なぜかもう可愛いとは思えなくなっていた。


僕は男の穴に入れようと手マンした。
「いたっ」
短く切ったはずの爪が引っかかってしまった。ティッシュを宛がうとそこには赤い染みができていた。
行為の後、彼はお茶を出してくれた。くまもんがパッケージのお茶。マグカップに描かかれたルフィが満面の笑顔で微笑んでくれていた。

 

 

 

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実際のところ、ぼくは人間が嫌いなのだと思う。誰の事も好きじゃない。かと言って犬も猫も好きじゃない。
それなのに誰かと一緒にいたいだとか、一緒にいると落ち着くだとか、くっついて寝ると安心だとか、気の迷いでそんなことを思ったり言ったりするのが一体全体間違えなのだ。
全てに冷笑的で、自分以外の全ての人間を馬鹿にしている。だってそうしないと、まともじゃいられないじゃないか。孤独な人間は孤独に死ね。