エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

のせてます、veroにいろいろ。アルバムは顔とエロです。※等価交換

その人からはジューシーな汗の香りがした。
身体のあちこちに顔を埋め、その匂いを脳裏に焼き付けた。
匂いが彼の存在の輪郭をはっきりとさせた。

 

「東京に来てからラブホ入るの初めてです」
坂道を登りながら彼はそう言った。
僕より年下の彼は背が高いわりに子どものようにあどけない顔をしている。少しぽっちゃりしたお腹の膨らみがキュートだと思った。
彼は期間限定の転勤で、福岡から上京してきたのだという。
ラブホ街はなぜ坂道に多いのだろうと思いながら、僕は立ち並ぶロマンティックな看板の数々を眺めた。

 

ホテルに入り、パネルから部屋を選ぶ。どの部屋も似たような作りだが、設備に故障がある部屋には注意書きが張られていた。
エレベーターに入る。照明が暗く、お互いの顔は見えない。部屋に入ると、ベットの横が広く鏡張りになっているのが目に飛び込んでくる。

ソファに座り、どちらからともなく手を繋ぐ。
Tシャツの上から胸のあたりを撫で、柔らかい感触を探す。その中の小さな突起を爪にかける。
円を描くように指の先で弄ぶ。甘い声で喘ぐ。布越しに唇を当て、固くなってきたそれを食む。
気持ちいい、と漏らす彼の顔は嬉しそうににやけていた。じっくりと乳首を愛撫した。
ズボンを脱がすとパンツの中で固くなったものはねっとりと先端を濡らしていた。
ベットに移動してお互い裸になる。彼のモノは太い系の巨根で、長さはないが亀頭も竿も僕のモノよりも二回りほど大きかった。
「全然大きさが違うね」そう言ってお互いのチンポを重ね合わせてしごいた。
「エロいね」と鏡に映る二人の姿を見ながら行為した。

 


行為が終わると一緒にお風呂に入った。薄暗くなったバスルームでぬるめのお湯に浸かった。
「男の人とあんまりやったことないんで、緊張しました」彼は言った。
「実は遠距離中の彼女がいて…。彼女には俺がせめる一方なんで、今日いっぱいしてもらって気持ちよかったです。」
「前の彼女なんて舐めたりもしてくれなくて…正直、入れるのが一番気持ちいいわけじゃないからあんまり楽しくないんですよね」
「でも、恋愛感情は男には向かなくて。子どもも欲しいし、地元に戻ったら結婚しようと思ってるんですよ」

「えー。彼女いるのダメじゃん。僕もさ、長く付き合ってる人がいるよ。お互い様かな。」
「やっぱりさ、女の人と結婚して子どもがいて、普通の家庭を築けることがさ、幸せって感じなんだよ。遊びすぎには注意しなよ」僕は笑いながら言った。

 

 

愛し愛される人がいても、そんなものでは皆飽き足らない。
彼は結婚したって男と交わり続けるだろうし、アナルはやったことないって言っていたけれど、そのうち入れたり入れられたりもして、前立腺だって性感帯になるかもしれない。
家に帰ったらパパ―と笑顔で駆けて迎えてくれる子どもがいて、家族で食べるカレーライスはどんなレストランで食べる料理よりも美味しくて幸福な味がする。
東京で素敵な男性と出会い、一緒に暮らし、同性パートナーシップを結んで、これで僕たちも結ばれたね、なんて言って二人でタキシードを着たフォトウエディングが飾られた寝室で抱き合って眠ったら、この世界で初めて孤独ではない気がした。
名前も知らない男とチンポしゃぶりあってお互いの我慢汁のしょっぱさを味わい、苦悶なのか快楽なのかどちらだか分からない、くしゃくしゃの顔に、唾液を流し込むようなキスを、兜合わせで射精したドロドロの快感は何にも代えがたく気持ちいい。
人生一度だからと言って全てを手に入れようとする僕も君も、愚かで狡くて、みんな騙しながら幸せになろうね。

 

 

生暖かいお湯の中で僕たちは手を握り合った。

人間便器

久しぶりに会ったその人はずいぶん太っていた。目が合ったけど無視した。歩けば誰かに触れてしまうほど通路にぎっしり人がいたので、他の人とやりたいと思った。お尻を撫でられても素知らぬフリ。しかし誰も僕と視線を交してくれないので、仕方なくその男と個室に入った。

その人とは連絡先を交換し、部屋にまで行ったこともあった。洗濯乾燥機がガタガタと音を立てている横で、フェラさせられたなあ。ということを穴に指を入れられながら思い出した。穴にちんぽを擦りつけられ、犯したいと言われた。穴に入れる指を増やしてきたのでやめてほしいと断り、しごき合いでイッた。キスをして個室を出た。なんか嫌だな、もう嫌だな。何が嫌なのかもう分からないけど。

 

 

 

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雑居ビルの一室、僕は男を買いにきた。待合室にいると、ちょうど出勤時間なのかぞろぞろとスタッフが事務所のドアを叩いた。受付の男に声をかけると、下の階で予約してと言われた。下の階?疑問に思いつつ地下のフロアへと降りた。そこは発展場で階段を降る途中、妖怪のような中年が寄ってきたので手を振り払った。そいつはよろけて階段を踏み外し、十数段を転げ落ちた。床に伏した男は動かず、頭からは鮮やかな血が流れていた。人を殺してしまった、と思った。でも、こういった場所だから、うまく処理してくれるかもしれない。そういった現実的ではないことを考えつつ、防犯カメラを気にしながら顔を俯けてビルを後にした。

家に着くと、扉の前にメモが貼られていた。「今までありがとう。」という文字とアゲハ蝶のイラスト。これを書いたのは恋人か?それとも僕か?分からなかった。アゲハ蝶はそこから、ひらひらと飛び立って、気づくとあっという間に手の届かない空中にいた。

 

 

 

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この人とは以前ヤッたことがあった気もする。とてもタイプなお兄さん。一重に薄めの眉、短く刈り上げた髪。きっと学生時代はスポーツとかやってたんだろうなって雰囲気。個室に入ると身体を撫でられ、こんなタイプの人にせめられてるんだと息が荒くなった。カチカチになった僕のものに対して、彼のものはしんなりしていた。喉奥まで咥え込んでくれた。亀頭まわりを舌でなぞったり、じゅぽじゅぽと音を立てたりとテクニシャンだった。僕の唾液を飲み込むようにキスした。おでこをくっつけると、彼の高い鼻が僕の低い鼻に当たった。フェラしてくれてる彼の顔が見れないのが勿体ないと思った。

今度は僕が彼のものを咥えると、柔らかいそれがどんどんと硬度を持った。彼のおちんちんは下反りで小さめだった。硬さも芯のない硬さだった。それも可愛いなと思った。

ローションでしごいてもらい僕だけがいった。

シャワーの待ち列が長かった。その間彼のことを眺めた。暑い胸板、はりのあるおっぱい。薄く浮いた腹筋。右足にはミサンガ。

なんであんなに近くにいたのに、キスもしたのに何も見えてなかったな。もっと彼のことを眺めたかった。こんなにタイプではあるけれど、セックスなんてやっぱり何の意味もなかった。素晴らしい彼に僕は1ミリも近づいてはいなかった。

 

 

 

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×××で微動だにしない人がいたら、それが印だ。その人の隣に立ってチャックを下ろした。清潔な短髪。白髪混じりのグレーヘアー。厚手の素材のネイビーのスーツを纏っている。50手前くらいだろうか。ガッチリとした体つきだ。ちらりと覗くと彼は勃起したチンポを縦横にふっていた。彼に見えるよう僕もしごくそぶりをする。目があったら、そのまま個室へと向かう。

ワイシャツの上から乳首をさわる。シャツをズボンから出してその隙間から手を忍ばせる。今度は爪を立ててその突起を撫でた。

ベルトを元あった方向から逆側に押し戻す。革のベルト。光る腕時計。身につけているものが一つ一つ小綺麗で高級そうだった。会社では部長クラスの役職だろうかと想像した。

チンポは普通より少し大きめくらいで、唾液を手に垂らすとさっきまで食べていたミンティアのせいで少し冷たい感じがした。彼のものをその液体でしごく。思わず咥えたくなって、喉奥まで。亀頭の滑らかさやカリの段差のザラつきをじっくり舌で味わい尽くす。喉の奥まですべらせて、さらにねとねとした液体が込み上げてそれを使ってさらにしごいた。

いきそう。いいよ、そう心のなかで呟くと彼は黄味がかった精子を××の上に吐き出した。その様子を見ながら僕もしごいてたけどいけなかった。

「人が多いね」と部長は言って二人でその個室でやりすごした。

 


イけなかった僕はまだ誰かとやりたかった。目の合った男の後を付いて個室に入った。

少し薄めの顔。ボックス型のリュック。グレーのスーツは少しよれていた。

マスク越しにキスした。その人は早々と僕のズボンをおろしチンポを取り出した。フェラされて僕が一方的にいった。彼は精子を喉奥で受け止めて、それだけでは飽き足らず裏筋を揉んで尿道に残った精子を押し出して最後の一滴まで飲み干した。

 


口の周りをティッシュで拭くと、最後に唾をぺっと吐き出した。彼は僕の性欲を受け止める便器だった。彼は自ら人間であることをやめたがっていた。それは愛も倫理とも最も遠くにある。人間でなくなりたい、動物でありたい、モノでありたい。欲望されたいという願望。僕も彼と同じ。人間便器。

トトトトトトトトトトトトトトトト

やれなかった。ロッカーで携帯をいじっていたら店員さんにここにいないでくださいと言われた。通路に戻って扉の閉まった個室を隙間から覗くと、その中には一人でチンポをしごく男の姿があった。

 


やれなかったので、他の×××に向かった。意外と人が多く、しかしなかなかタイプな人がいなかった。

顔がタイプではないが体がタイプの大柄な男と個室に入った。天井を含め全面が鏡で囲われた珍しい作りだった。彼の口臭が苦手だと感じた。

しかし乳繰り合いキスを重ねているうちどうでも良くなった。コンドームをして挿入し、正常位、バック、騎乗位を順序よく進めた。春にしては暑いくらい暖かい日でお互い汗だくになった。ローションと汗と唾液でぬるぬるだったけどいけなかった。

 


いけなかったので、◯◯駅に向かった。

掲示板に呼びかけると10分ほどして、40才手前くらいの小柄なサラリーマンが入ってきた。彼は手を洗いながら周囲を見渡していた。目が合うとスラックのジッパーをおろした。それが合図のようだった。二人で個室に入ると、マスクを下ろしてキスをした。舌を入れて触れ合うと、彼の舌の短さが分かった。こうした出会い方ははじめてで興奮した。

彼は僕のベルトを外し、パンツを少し下げて亀頭の先端に触れた。彼のベルトを外す。パンツは薄いネイビーのボクサーパンツで我慢汁でシミができていた。パンツを下ろす。彼の亀頭には大きめの黒子があった。そのままフェラチオする。声にならない声がふっと漏れる。たまらない、何かを我慢するように目をぎゅっと瞑る表情が可愛い。水が流れたり、家族連れが子供を呼ぶ声、周りの物音が聞こえる。

手を重ね合うと彼が薬指に指輪をはめているのに気づいた。チンポを重ね合わせて扱くと気持ちが良くて、イクときは二人で××のなかに射精した。ガチガチになった僕のものは制御が効かずに壁にもべったりと精液を吐き出してしまった。

扉の隙間から外を覗いたが、様子はよく分からなかった。ありがとう。はにかんで彼はそう言った。

 


ありがとう。僕の好きな言葉。この世にはたくさんのありがとうがあるけれど、こうした生臭い薄汚れた精液まみれの行為で感謝の言葉が穢れるのが好き。

 


彼の後姿を少し目で追ったが、たくさんのスーツ姿の男達に紛れ、すぐに見失った。

生きるのが面倒くさくて赤信号駆けて渡った爽やかな朝

その人は背が高かった。やせ型の体形だけど、30代になって脂肪が付きはじめたのであろうラブハンドルが愛おしかった。
ほとんどクセのない黒髪は前髪を上げたアップバングでツーブロックの刈り上げられたうなじやもみ上げがセクシーだった。
僕なんか相手にされないだろうと思っていたけれど目が合って個室に入った。


彼は僕の背中を焦らす様に爪を立てて触った。ぞくぞくするように気持ちよさが身体を走った。
マスクを外してキスをする。舌が絡み合うと少しお酒の匂いがした。


「ごめんなさい」
恋人から昼頃に届いた、たった一言だけのLineメッセージが脳裏にちかちかと浮かんだ。
心当たりがないわけではない。しかし、何に対しての謝罪なのか、どうして恋人がそれを送ってきたのか、はっきりとした理由は分からなかった。
浴槽から溢れ続ける水、薄く濁った赤い湯舟に手首を切った死体が浮かんでいる。
大量のドラッグを酒で流し込んだ。死んでからずいぶんと時間がたっていたので、炬燵の温かさに反してそこに伏した彼の身体は冷たかった。
部屋の梁にかけられたロープに身を吊るしていた。浮いた足元には糞尿の水たまりができている。
僕が淫らな行為をしている間にも彼は死んでしまうかもしれない。そんな悍ましい想像をした。


「めっちゃエロいっすね。俺見られるの好きなんですよ」
そう言って彼は扉の鍵を外した。
仁王立ちする彼に跪いてフェラチオした。幾人かの人がその光景をちらちらと覗いていた。
やがて、別の男が個室に入ってきた。僕は片方の手で乳首を責め、もう片方の手でちんぽを扱き、口では別の男のちんぽをしゃぶっていた。
おちんちんの生臭い匂いがした。見上げると僕の相手をする二人の男は肩を組み合いキスしていた。
「見られるのやべぇっす」「このままビデオ回したいっす」
そうした役割をぐるぐると交代しながら、脳みそがとろけるような淫らな行為を繰り広げた。


「ぶっかけていいすか?」
そう言って二人分の精液が僕の顔面を濡らし、ねとねとした液体をティッシュで拭うとまた三人で身体を弄りあった。


もし恋人が家で死んでいたら、職場や警察への説明が面倒だろうなぁと思った。


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氷の張った湖で釣りをするときに氷上に穴を開けるときのように、おでこにもドリルで穴を開けた。
頭蓋骨にまで穴を開けるのは力が必要かと思いきや、押し当てていればあっさりと力の抜けるポイントがあり貫通したのが分かる。
そこに太目のストローを刺して脳汁を吸うというのが、タピオカブームの次に女子高生たちを熱狂させたブームだった。
ストローから脳を吸い上げる瞬間、ずぞぞという音を立てる。それがASMR動画としてTikTokで拡散され流行したらしい。
脳はわらびもちのような触感であまい豆腐のような味だという。トッピングでトリカブト入りの氷を入れるのが人気だ。

 

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発展場を出た後もなぜか発展場の匂いがすると思った。


【メモ】
・××ダス×ーできまる
・乳首のようないぼが背中にある人
・眉毛がほとんどない。フェラしてくれた。
・匂いのある唾液。ローション手コキするとすぐにいってくれた。


あ、これはマスクに染みついた匂いか。ローションと唾液が交じり合ったような、ほの甘い匂いを感じながら家路に着いた。


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A.その人はコックリングをしていた。
お互いの身体の形を確かめあうように、お互いを触りながら最後は一緒にいった。


B.卓球の水谷準選手を90kgくらいに太らせた感じの男。
重めの一重瞼がキュートだった。チンコは包茎で剥くと巨峰のようにつやつやの亀頭が姿を現した。
ふだん包茎の人はこのように、亀頭が輝くかのようにつやつやの場合があるなと見惚れてしまった。


C.「俺のアヘ顔みて」「俺いまブサイクな顔してる?」
白目をむきながら口をだらしなく開けて男は聞いてきた。
笑えそうで笑えなそうで笑えた。


D.爽やかなお兄さん。
金玉が性感帯だったので「気持ちいいねぇ」と言いながらたくさん責めた。
「若いのにエロいね」と言われたけど僕はそんなに若くない。


E.キスマークを付けてこようとしたり、入れていいかと聞いてきたりした。
ダメです。


F.マスクを取ると意外と口ひげが生えていた。
髭からは少しホームレスのような匂いがした。
フェラするのが好きで、喉奥にガンガン腰を振ると美味しいと言って喜んだ。

 

G.「右の乳首と左の乳首、どちらかと言うと、どっちのほうが感じると思う?当ててみて」
「うーん。右?」「あぁん」「うーん。左?」「あはぁん」
彼によると乳首のGスポットというものがあるらしく、舌でぺろぺろと舐めるとその一点でより雌らしく喘いだが、どちらのほうがより感じる乳首なのかはよく分からなかった。


総括
最近気づいた事実だが、僕は好みのタイプからちょっとキモイと思うくらいまでの人とならセックスできる。
12歳~55歳くらいまでのガリガリ~巨漢までわりと誰でもいける。


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何度かホテルで会っていた男から、自宅へ招かれたので1時間ほどかけて埼玉の奥のほうまで出向いた。
駅まで車で迎えに来てもらい、マンションの部屋に入ると東京ではなかなか気軽に借りれない広さだった。
クッションに蹲った毛むくじゃらの生き物が足元へと駆けてきた。
初対面にも拘わらず前脚を上げてぴょんぴょんと僕の周りを飛び跳ねた。


「こいつ人間大好きなんですよ。噛まないから安心して。シャワー浴びてくるから遊んで待っとってください」
部屋でソファに座る僕の手をぺろぺろと舐めたり、あるいは覆いかぶさりながら顔を舐めてきた。
動物からこんなに親密に接されるのは初めてだった。
犬は服をきていた。おむつもしていた。人間の乳児が獣にされているようで気持ち悪かった。
僕に人間以外の生き物が可愛いと思える感性がないことに少し悲しくなったので、ソファから立ち上がり部屋の隅でスマホを眺めていた。


シャワーからでた男と寝室にいき裸になった。クーラーがなかなか効かず寒かった。
男が僕のチンポをしゃぶっているとき、その姿が犬と重なって嫌な気持ちになった。


ドックフードをかじった舌で満遍なく舐められた僕の指を、その飼い主である男も舐めていた。
男の顔をじっと見つめる。何度か会ったはずなのに、なぜかもう可愛いとは思えなくなっていた。


僕は男の穴に入れようと手マンした。
「いたっ」
短く切ったはずの爪が引っかかってしまった。ティッシュを宛がうとそこには赤い染みができていた。
行為の後、彼はお茶を出してくれた。くまもんがパッケージのお茶。マグカップに描かかれたルフィが満面の笑顔で微笑んでくれていた。

 

 

 

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実際のところ、ぼくは人間が嫌いなのだと思う。誰の事も好きじゃない。かと言って犬も猫も好きじゃない。
それなのに誰かと一緒にいたいだとか、一緒にいると落ち着くだとか、くっついて寝ると安心だとか、気の迷いでそんなことを思ったり言ったりするのが一体全体間違えなのだ。
全てに冷笑的で、自分以外の全ての人間を馬鹿にしている。だってそうしないと、まともじゃいられないじゃないか。孤独な人間は孤独に死ね。

 

男区臭人

僕はクリスマスプレゼントを彼の枕元に置いた。彼からのお返しはきっとないだろう。彼に何か贈る価値があるだろうか。

 


今年はサンタさん来るかな。

子供の頃待ち遠しかった日々を思い出した。

まあ、プレゼントなんてさ、気持ちがあれば何もいらないのだよ。と曳かれものの小唄。彼には気持ちさえないかもしれないという現実に気づかないフリ。彼は僕に甘え尽くし、それに微塵も罪悪感なんて抱かない。

 


どんなに良い子だろうと、大人になったらサンタクロースなんて来るはずないじゃん。

 


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僕が放蕩してしまうのは、彼が僕に負い目を作るからだ。金を出しているから、経済的負担が大きいから、だから僕には他人とセックスする権利がある、自由にセックスする権利がある。と思わせてしまう彼が悪いのだ、と自分勝手な責任転嫁をする。

 


プレゼントを買ったのは彼を喜ばせるためではなく、不貞行為への償い…埋め合わせという気持ちもあったのかもしれない。どこか悪いことをしているという気持ちが便器の取れない汚れのように頭の片隅にこびりついている。いや、しかし、買うときに彼の喜ぶ顔も思い浮かべた。どんなに険悪なときでも、これを買って帰ったらきっと喜ぶだろうな、とかこの食べ物好きだったよな、とか思い浮かべてしまう。それは例えば別れても続いてしまう呪いのようにも思えた。

 


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🕕

少し休日課長に似ていた。少しクセのある長めの髪をオールバックにしていた。勃ちが悪く完全に硬くはならなかった。アルデンテ。あまり喘ぐこともなく、なんか調子悪くなっちゃった。ちょっと休憩しようと言って個室を出た。いけなかった。

 


🕡

メガネをかけた人はあまりいないのだけど、その人はフチ無しのフレームのメガネが似合っていた。痩せ型で長身、髪はツヤのある硬めのワックスでセットされていた。

若いね可愛いねなどよく喋った。

隣の個室からは、このままやるとおしっこ出ちゃうと声が漏れていた。おしっこ出ちゃうんだって。彼は笑った。

キスはダメと言った。そのせいで僕の口の中は唾液でひたひたになった。

触り方が優しくてエロいと言った。彼のものはそんなにデカくなかった。

イッた瞬間からもう亀頭を触られるのがくすぐったくてたまらないらしく、プルプル震え笑いを堪えながら僕の手を制した。

いけなかった。

 


🕖

一度通路を歩いたときにお尻を触られた。顔がタイプではなかった。誰もやれそうな人がいなかったので妥協して個室に入った。敏感な乳首からは長い毛が数本生えており新種の虫やイソギンチャクを連想させた。

彼のものは太く亀頭が特に多かった。カリパンパンでしょ。我慢汁めっちゃ出てるよと見せつけた。舐めていい?痛くない?と許可をこまめに取られた。

かけて欲しいと言われたので、体にかけた。かけたいと言われたが、嫌そうなのを察したのか顔にはかけないから、と言われた。量が多かった。お臍に入った精液が水たまりになり気持ち悪かった。

行為したタイプな人の顔は覚えていないのに、この人の顔はなぜか思い出せる。射精したのに満足できなかった。タイプじゃない人とすると自尊心が傷つくと思った。

 


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その人は目があったときから顔を顰めていた。個室に入るとお互いのチンポを握り合った。乳首を舐め、また目を合わせると鼻で笑われた。そして男は個室を出た。

 


個室の扉の隙間から繰り広げられる行為を見ていた。どうやら一人の男が横たわっており、もう一人がその上に覆いかぶさるようになりながら、乳首を撫でていた。じっと眺めていると股関に触れられた。禿げた老人がぴたりとくっつくように隣りにいた。ギョッとして逃げるように通路の奥に進んだ。後ろをちらりと振り返ると老人は一人だけ違う時の流れに身を置いているかのように異常なほどゆっくりと通路を徘徊していた。

 


別の男に手を伸ばすと彼は穢らわしいものを見るような目で僕の手を払い除けた。僕もあの老人と同じだった。

 


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そんなことがあったというのに、僕はまたその場所へ向かっていた。ちらちらと目があったのはおじさんで少し三白眼な奥二重と短いまつ毛と刈り上げた髪に引かれた。

個室に入ると乳繰りあって、リスク回避のためにあまりしないようにしているフェラチオをした。音が鳴るよう亀頭にキスをした。喉の奥までストロークさせると、僕の頭を掴み腰を振った。

キスをするとコーヒーにも少し似たタバコの香りがした。ほろ苦い香りを味わった。

 


彼は僕の中に指を入れた。指を内側に曲げ振るわせると何かが込み上げてくるように気持ちが良かった。どこが気持ちいいの?は僕の割れ目にそれを押し当ててぬるぬるのローションで濡らした。なんだか入れたい気持ちになってきた。今度開発してくれる人がいたらぜひお願いしたいものだ。

 


見つめ合いながら唇を舐めた。キスしたいの?と舌を合わせる。舌と舌が触れ合うと心地よい。めっちゃ笑ってるね。キスするとニヤけてしまう。

彼のものは年のせいかあまり固くなかったし、あまり大きくもなかった。僕だけがいかせてもらった。

 


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美味しいご飯を食べたいならレストランに行く。肩が凝ったからマッサージを受ける。髪が伸びたから美容院に行く。それぞれ、誰かが誰かに役割を求めるように、ただ僕はセックスするためにある人に会い、ある場所へいっただけ。それだけの行為を不倫だとかなんだとか言って騒ぎ立てる人の気がしれない。食事を楽しむように、美味しいものを食べるのが好きなのと同じようにセックスが好き。ある人にとってはそれが許せないことらしい。不思議だ。しかし、そう言いながらも実際には僕もどこかで罪悪感を抱えているらしい。馬鹿らしくてウケる🤣

陰部摩擦罪

「てか今日軽くエロいことしません?」

「はやく攻められたい!」

「まじすか。部屋散らかってますけどいいすか?」

 

一年ぶりに帰省した実家から帰る電車の中そんなメッセージに返信をしていた。都内に借りているアパートからは1時間ほど離れた場所に彼は住んでいた。コンビニで待ち合わせる。Tシャツにジャケット、足元は素足にサンダルを履いた男が現れた。家が近いのだろうが、ちぐはぐな風貌だった。

 

「来てくれてありがとう。」

男に連れられてマンションの門をくぐる。玄関の扉を開くと床に置かれた衣類や机の上に山積みになった本が目に入った。確かに散らかっていた。こうした粗雑さに男らしさを感じる。安そうな細いフレームのベットには薄いマットレスミッキーマウスの描かれたブランケットが掛けられている。

 

「座っていいよ。」

そのベットに腰掛けると男はぴったりとくっつくように隣に座った。

手を重ね、絡み合わせ、見つめ合った。彼は女の子も好きで最近彼女と別れたのだと言う。

「朝抜いちゃったから。勃ちが悪くてごめんね。」

「男に攻められると興奮する。言葉責めしてよ」

 

行為の後、ベットに横たわりながら本棚を眺めた。リルケ詩集、ドフトエフスキーの数々の著作、米原万里、ロシア語のテキストがみっちりと詰まっていた。

 

「本が好きなんですね。」

「そう。大学で散々勉強してたんだけどね。馬鹿だから結局何も分からなかった」

彼は宙を見つめながらそう言った。

 

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「mrmr」

自分の中に巣食う性欲を飼いならせなかった。×××に行こう。そう思って新宿へ向かい、そこに向かう途中、今までやりとりした会ったことのない男たちへ片っ端から「イイね」していった。ちょうど入口に到着したあたりですぐに会えそうな男が見つかった。中央線沿いに住んでいるというので、駅まで折り返して電車に乗った。

 

待ち合わせ場所に着くと、アウトドアブランドの黒いコートに濃紺のジーパンを履いた彼がガードレールにもたれ掛かっていた。小脇には2リットルのペットボトルの麦茶を抱えている。180cmほどだろうか、長身でコートを着ていても分かるほど痩せている彼は細長いシルエットがマッチ棒を連想させた。写真で見るよりも好みだった。

 

狭い部屋は小綺麗に片づけられており、本棚と自転車とベット、それ以外にはほとんど何もなかった。

 

「手だけ洗ってもいいですか?」

そう言って借りた洗面台はガラス製で、やはりそこも曇りひとつなく磨かれているように見えた。

 

「狭いんですけど、適当に座ってください」

さっき買った麦茶をガラスが二重になったデザインのグラスに注ぎながら彼は言った。

 

ベットに隣り合わせに座ると彼の顔を覗き込んだ。色が白く、眉が濃い。柴犬みたいな顔が可愛かった。僕は彼の体中を撫であげ、時には爪を立て、唾液で濡らし、じっくりと舐めると身を捩じらせて悦んだ。僕は彼の顔が好きだと思った。彼の黒目を見つめるとそれだけでイキそうになった。恋するような感覚だった。

 

「入れて欲しい…」

彼はそう言った、しかし僕は彼に入れることができなかった。あんなに欲望が身体中を支配していたのに、役に立たなかった。彼の欲望を果たすことができず、扱き合ってイッた。

 

カーテンはベージュの薄い布製で、柔らかい日差しが布越しに僕たちを照らした。

少し開けた窓からは電車の音が聞こえてきた。

雑誌に載った生活のように彼の部屋はどこも整えられていて、シンプルで丁寧さを感じた。

 

「どんな人がタイプですか?」僕は尋ねた。

「頭良い人かな。あんまり場違いなこと言わない人っていうか。口が悪い人は好きですけど、言っちゃいけないことは分かってる人みたいな。」

彼は静かな話し方でそう言った。

 

「また会ってもらえますか?」

彼は俯きながら、「いいですよ」と答えた。

 

セックスに失敗し、のうのうと好きなタイプを聴き、それなのにまた会いたいだなんて、場違いなことばかり言う僕が彼に好かれることはないのだろうと思った。

 

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×××で会った人は見つめ合うのが好きだった。

しかし、中央線沿いで会った彼のように、イキそうなくらいな気持ちよさはなかった。

その違いはなんなのだろう。

 

男はイクときはコックリングを外した。

壁にもたれかかった兜合わせの体制が悪かったのか尾骶骨が痛くなった。

 

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口に入れたタブレットをバリバリと噛む音が聞こえた。

キスをするとグレープ味のタブレットの奥にほんのりとタバコの香りがした。

 

「胸舐めて」

感じそうな乳首だった。乳輪の周りをぺろぺろと舌で舐めまわした。どうやら右乳首のほうが感度がいいらしいということが分かった。吸うと柔らかかった。

 

夜遅い時間にここに来るのは初めてだった。夜にしか出ないポケモンに出会ったようなワクワク感があった。更衣室でみたときから気になっていた。整えられた髭がセクシーだ。僕とやってくれるのか分からないくらいモテそうだと思った。

 

彼のモノは長細い巨根だった。彼はカウチと僕の尻の間をローションで濡らし素股した。そうしながら強く抱きしめ合った。「好き」と言ってみたりした。

 

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彼は高級ブランドが好きなのだと言う。肩から掛けるバックは誰もが分かる高級品だ。

服を脱がしていく。柔らかい生地のシャツは××××、ベルトは××・××××、靴は××××××、と彼から一つ一つ記号を剥がしていく。

 

彼は身体中が性感帯で横腹を撫でたり、耳に吐息を吹きかけるだけで甘く喘いだ。

僕は彼とはあらゆる体位で入れたりだしたりを激しく繰り返した。

 

敷いたタオルにはピンクの液体が付いていた。

ごめんね、と思いながら一緒にホテルのジャグジーに入った。

 

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恋人と挿入行為をした。何年も営みがあったが、中で出したのは初めてだったのかもしれない。汚れ切った僕は彼のことが心配になったが、定期的な検査の結果を信頼することにした。

 

僕と彼は抱き合って眠った。そうすると幸せな感じがしたが、それは人と人とが抱き合うと分泌されるセロトニンだとかオキシトシンだとかの効果に過ぎないのかもしれないと微睡の中で思った。

 

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「さきっちょだけだけだから、入れさせて?」

初めて言われたそのワードが僕は嬉しくもあり、恥ずかしくも、可笑しくもあった。

「あー入れたらすぐにいっちゃうなぁ」

中指だけを入れられたが、なんだか気持ちよく感じた。もし今度会うことがあったら入れられたいとも思った。

 

「楽しかった。ありがとう。」

くちづけをして別れた。

またどこかで

前を歩く男性を目で追う。紺色のポロシャツ、グレーのスラックス。シャツの上からでもズボンから少しだけはみ出たぜい肉が分かる。袖からのぞく二の腕、鷲掴みにして脇に鼻を寄せればどんなに匂いがするだろうか。男らしさを煮詰めたジューシーな体臭を想像する。黒い肌、グリースでまとめられた短髪、刈り上げられたうなじがセクシーだ。隣にいる彼女でさえ、性的なアクセサリーに見えた。

 

別の男に目をやる。白いシャツ、痩せて引き締まった身体は背中から薄く肩甲骨のラインが見える。ウレタンのマスクは下着の薄い生地を連想させる。マスク越しにキスをしたらどんな感触がするだろうか。

 

電車に乗ると僕の目は男性たちを物色し、席の両端から両端まで嘗め回すように見つめ、この人とはセックスできこの人とはセックスできないという仕分けが無意識に始まっていた。

 

ハウリング「今すぐ会いたい」を更新する。やりたい。プロフィールをみて近場の男たちに「イイね」ボタンを押す。「イイね」ボタンを押す。「イイね」ボタンを押す。

 

疼く性欲をうまく飼いならせないのだ。自分についた足跡はタイプじゃない男を片っ端からブロックした。お互いそのほうが幸福だ。メッセージを見返していると、数日先に合う約束をしていた男が見当たらないことに気づいた。ああ、そうか、今度は自分がブロックされる側になったのだと呆然とする。「いつか会いましょうね」とやりとりをしていた別の男へメッセージを送る。数時間しても返事はなく、よくみると最終ログインは1週間前となっていた。

 

 

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乱交する夢をみた。実物は見たことがない、発展場にあるというケツホリブランコに吊るされ、痩せた人太っている人、タイプな人タイプじゃない人に代わる代わる入れられて気持ちがよかった。

そんな淫靡な夢を見て今日は×××に行こうと思った。目が合った長身の男と個室に入った。首筋にキスを繰り返した。

 

鏡の中の自分と目が合った。僕は僕自身をにやりと三日月型になった目で見つめ返していた。何がおかしいというのだろうか。

 

会社の同僚にやや嘲笑気味に聞かれた。

「いつも穏やかですよね。怒ることとかあるんですか?何でストレス解消してるんですか?」「そうだねぇ。寝ると大体のことは忘れちゃうよ(笑)」

セックスセックスだよ。やりまくってんだよ。好きでもなんでもない男でも舌を絡め合わせて唾液交換してるとそれだけで頭の中が真っ白でゴミみたいな仕事のこと一つも思い出さなくて済むんだよ。クソが。

 

キスをするとミントの爽やかな匂いがした。「俺、早漏なんだよ。」ローションで扱くとたまらないという表情で苦悶する彼の顔を眺めて楽しんだ。余計な肉の一切ないやせ型の身体にはうっすらと腹筋が浮き出ている。愛しさを込めて腹に頬を擦りつける。

 

「ずっとこうしてたい。今日は来て良かった」男は言った。

今晩の晩御飯はなんだろう。僕は抱き合いながら、家に帰ると待っている食卓のことを考えながら少しだけ微睡んだ。

 

 

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男は大柄で180cm以上はあるだろう。太ってはいないが、どこを触っても柔らかい身体が心地良かった。

 

「たくさん虐められたいです。たくさん寸止めされたりいじわるされたいです。」彼はそう自己申告した。僕と20cmも背丈の違う大男がそう言ってくるのは愉快だった。

彼はマスクを外さなかった。彼の口へ唾液を流し込みたかったが、キスをしても唇を重ね合わせるだけだった。彼のほのかな口臭からキムチやチャーハンなどさっき食べたかもしれない料理を想像した。

 

ローションをつけた掌で亀頭を包み込むように撫で回す。男は困ったような顔で僕の目を見つめた。出ちゃうよ漏れちゃうよと続ける。

僕は彼の被虐的欲望を叶え、何度も何度も発せられる「いきそう」という言葉と、実際に射精するギリギリのラインを攻めるチキンレースを繰り広げた。しかし、あまり喘がない彼に責め甲斐を感じることができず、うまくノることができなかった。言葉巧みに彼を辱める言葉が吐けたら良かったのだけれど。寸止めを繰り返して最後は兜合わせでイッた。

 

出したあとも彼のモノは固いままだった。「あんまり萎えないんですよね。」僕は二回戦をやる気力がなかったので、そのまま個室を出た。

 

シャワーを浴びた後、服を着て扉を出るとエレベーターが来るのに少し時間がかかった。彼も乗り場で一緒になり、階段で降りるんだったと後悔しているうちにエレベーターが到着した。

「よく来るんですか?」

気まずい思いを抱える僕とは裏腹に彼は気さくにそう聞いてきた。

「たまにかな…。よく来るんですか」僕はそう尋ねる。

「月一くらいかなぁ。よく⚫︎⚫︎に行ってるんですよ。」

「ああ、⚫︎⚫︎ね。若い子好きなの?」

「若い子は責めたいっすけどね。プラスマイナス五歳くらいなら。」

 

リブのある厚手のTシャツをぴったりと着こなしている。クラッチバックをつまむように持ちながら歩く彼の姿を改めてまじまじと眺める。短い髪は艶やかなジェルで整えられていて、ガタイも良く浅黒い肌が健康的だった。モテそうだと思った。

 

「〇〇町に住んでるんすよ。」と駅までの帰り道聞いていないことまで話してくれる彼は、僕に少し気があるのか、持ち前の人懐っこさを振りまいているのか判断が付かなかった。

 

彼が本当に出会いたいのは、自分の欲望を口にしなくても快楽の加虐を尽くす君主であり奴隷だろう。僕はそれができないので、深く関わるのはやめようと思った。

 

「またどこかで。」

 

僕はそう言って振り向かずに改札をくぐった。

 

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彼のモノは最後まで勃起しなかった。ロッカーキーは右手にしていたのだから責めるのが好きなのだろう。

スポーツブランドのロゴマークが入った黒いマスク。少し弛んだ体は抱き合うと気持ちが良かった。胸を揉むと柔らかかったけれど乳首に触れても感じた素振りはなかった。

キスはしない代わりに、おでこを重ね合わせると彼の呼気と汗で少し湿ったマスク越しにミントの良い匂いがした。

彼にとって僕は暇つぶしでしかないのかもしれない。練習台でしかないのかもしれない。

感情の果てにあるセックスではなく性欲の果てにあるセックス。セックスですらない、扱き合い、乳繰り合い、汚し合い。ただの遊び合いだ。弄び合いだ。いつからか挿入のない行為がどこか偽物のセックスだという感覚を覚えるようになった。偽物でも気持ち良ければいいのだけれど。行為の途中、彼とは以前にやったことがあるような気がしていた。ただ、そのときのプレイがどんなふうだったかは覚えていなかった。

 

「キスしてもいい?ダメ?」「いいよ」

そう耳元で囁くと彼はマスクを下ろしてくれた。無精髭が生えた唇をそっと重ね合わす。

唇を濡らすように舌で少しだけ触れてくれた。僕が気持ちいいと漏らすと何も言わずにただ笑みを溢した。個室を出る前、彼は僕を抱きしめた。僕も彼を抱きしめ返した。甘えるように胸に顔を埋めた。感情が入る余地なんてないはずではなかったのか。馬鹿なことに、彼が僕に対してほんの少しでも好意を持ってくれたらいいなと期待した。

 

 

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コンビニで待ち合わせした彼は部屋着のままその場に姿を現した。

「髪もぼさぼさですみません」

言うほどぼさぼさではなかったが、黒いTシャツには細かい繊維がたくさんついているのが分かった。

「急な誘いなのにありがとうございます」僕がそういうと「全然」と彼は答えた。

短時間のやり取りのなかで彼の口癖が「全然」だということが分かり、少し舌足らずな話し方のせいでその言葉は「デ」と「ゼ」の中間のような奇妙な音の繰り返しに聞こえた。

 

抜き合いを終えると彼は僕をマンションの外まで送ってくれた。

「ありがとうございました」「全然」

帰り道アプリを開くと僕はブロックさたのかメッセージは見当たらなくなっていた。

 

 

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「タチなんですね(^^)まだ、自分ウケしたことないですねー💦」

「チンコデカいのですかー?」

「抜き合いとかしたいですね!」

 

48歳の彼から送られてくるメッセージはネットでよく見るオジサン構文さながらで、絵文字が多用されており可愛く思えた。また、返信していないのに次々と届くメッセージは突飛もないことを言い出しスリリングで面白かった。

 

部屋に入ると、ロフトベットのついたワンルームはほとんど荷物がなかった。少しだけ漂うタバコの匂い。この年代の男性の部屋に入るのは初めてかもしれない。少し色の入った眼鏡を外す。ちょい悪的な風貌のその人は話すと気のいいおじさんという感じで、ゲイがよく持つ丁寧さだとか品の良さは微塵も感じず、その粗雑さが男らしく魅力的だと感じた。

膨らんだお腹からズボンを下ろすと頭髪と同じように下の毛にも白い毛が混じっていた。

 

「今日は、ありがとう☺また、宜しくおねがいします💕」

帰り道メッセージが届き今度はこのおじさんのきっとあまり面白くない話でも聞きながらお酒でも飲みたいなと思った。

「また、どこかで」