エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

意識受動仮説

意識受動仮説によると人の心(事故意識)とは脳が作り出した巧妙な錯覚に過ぎない。
「私」が統合的に制御して身体を動かしたり感情を感じたり思考している訳ではない。自己意識は無意識の自立分散処理を制御していない。意識とは受動的な体験をあたかも主体的な経験であるかのように錯覚するシステムに過ぎない。主体「私」は自らの心身を操作するいわば社長のようなものと思われてきたがむしろ脳の片隅観測を行う「社史編集者」に近い存在である。
思考でさえ受動的なものである。脳のニューラルネットワークが何かの情報に対して無数の想起を行いやがて強く注力するものに集約されてあるひとつの解答を出す。記憶の連想も外部の知覚も無意識に過ぎない。
また、意図にはタイムラグがある。指を曲げようとすると指を動かす0.35秒前に指を動かす電気信号はでいている。意図より先に無意識が存在している。さらに脳を直接刺激し皮膚感覚を感じるようにしたところ、皮膚感覚を意識するのに0.5秒のタイムラグがあった。熱いものに触れてその瞬間に熱いと感じるが、それは錯覚で感覚は実は遅れてやってきていて、その瞬間に感じたように脳が錯覚させている。
なぜ自意識が生まれたのか?無意識の情報処理や感情によってメリハリをつけないと情報が膨大すぎて処理をすることができないため、脳は主体的な意識という錯覚を作り出したのだ。
人間とは外部からの刺激に対して利己的に反応するだけの機械である。

その人に家に来ない?と誘われた。話は合うのにタイプではなかったので、やんわりと断った。セックスなんてある程度顔がイケれば誰とでもできる。あなたとこうして漫画やアニメの話をして笑い合うということはあなたとしかできないのだからそのほうが僕にとっては価値があることだし尊いことなのだ。
僕にとってはセックスはコレクションに過ぎない。珍しい蝶を見つけて標本にするような。様々なバリエーションが見たいだけ。ジョジョの奇妙な冒険プッチ神父って出てくるじゃないですか。あれみたいに気持ちよかったときの記憶だけ取り出してしまっておければいいのにね。「今すぐ会いたい」とハウリングする。タイプじゃない人から着いた足跡は全てブロックした。そのほうがノイズがなくていいでしょ?傲慢かな。君と僕とは一度きり。世界で僕とセックスしてくれる人はどんどんと消えていく。歳もとってどんどんと誰からも相手にされなくなる。そうなることをどこか心待ちにしている。いや。嘘。していない。いつか誰かを見つけたいと思っている。恋人。僕と恋人の関係はもうどうにもならない宙吊りの状態で、抱き合ったって心の底から安心できる存在ではなくなってしまった。抱き合っている瞬間、心はどこか別の場所にあるような。昔はもっと相手と溶け合うような気持ち良さがあったのだけれど。一緒に抱き合っているときが一番幸せだった。もうそんな瞬間は彼との間には訪れないような気がする。そんなことを考えながら僕は×××に来ていた。最近皮膚に現れるという流行病が怖くて来ていなかったのだけど。身長が低いおじさんとやった。チンコが小さく丁寧に攻めてくれた。古代ギリシャでは生殖器包茎で短小のほうが良いとされ短小=理性的、品が良い、知的とされていた。ところで古代ギリシャのポリスの一つスパルタの最強部隊「テーバイ神聖隊」は同性愛カップルで編成されていた。僕たちはきっと愛する者を守ろうとして必死になって闘った。僕がイッたあとその精子を塗りたくって彼もイッた。唾液とローションが混じり合った匂いがする。顔がタイプじゃないからといってなんなのだろう。今日家に誘ってくれた人にのこのこ着いていってセックスでもエッチでもファックでもなんでもかましてくれば良かったじゃないか。そのほうが愛があるじゃんとか射精後の醒めた頭でまたしょうもないことを考え始める。明るいところでみたその人の身体は黒子や染みでいっぱいだった。老いを感じた。なぜか死が身近に感じられた。もう一刻も早く家に帰って身体の隅々まで洗いたかった。

ぼっちゃりした人。僕よりも年上だと言っていたけれどお金がないというのでホテル代を出してあげた。フロントを通らないラブホがどこかわからなくなってしまい、適当なホテルに入ろうとするとフロントで男同士はだめですよと止められた。休日の昼でどこもホテルはカップルだとか回春売春でいっぱいだった。いくつかホテルをハシゴしあるホテルに入った。きっと相手は連れまわされてうんざりしていただろうなと思った。なんどか寸止めしていかせた。顔は可愛かった。でもイイ歳してそんなお金も出せないなんてロクでもないやつに違いない。帰り道ホテル代もったいねぇと思った。

僕はこうして無数にある脳の欲望のうちの一つ性欲に突き動かされいくばくかの交わりを重ね自分があるということが幻想だということに安堵しながら絶望もして空虚な気持ちになりながらお腹空いたからパンでも食べるかとか言って、毎晩健康的な睡眠時間をとり決まった時間に起きては仕事に行き、毎日同じようなことを繰り返し、やがて老いて死んだ。