エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

クリームブリュレ

僕がその人と会ったのは確か高校一年生のころだった。掲示板の募集でメールをくれたのだった。

彼の家に行く前に、カフェに入ることになった。
「デザート頼んでいいよ。」
出てきたのはクリームブリュレで、バーナーの猛火でカリカリに焦がされるプリンの表面を見ながら、二人で「すごいね」と言い合って笑った。
彼の笑顔を見ながら「これからこの人とやっちゃうんだ」と思うと興奮してパンツの中が固くなった。
彼はファッションに興味がないのだと思う。タンクトップに袖のないパーカーと、少しラメ加工の入ったダメージジーンズを履いていた。
そのダサさが可愛くも思えたし、大人になってもちゃんとしたセンスを身に着けられないなんて…と少し不憫にも思えた。

彼は××にある高層マンションに住んでいた。若いけれど××で重役なのだと言っていた。
「あれ、持ってきてる?」彼は僕に尋ねた。
僕は中学生の頃に使っていた体操着を取り出した。ジャージのズボンには苗字が刺繍されていて間抜けな感じがした。
バスルームまで移動すると彼はデジカメを取り出した。僕と彼は絡み合いながらいろいろな写真を撮った。
「後で送ってあげるね。」にやにやと笑いながらそう言った。

部屋には誰かの遺影があった。会話の中でそれは厳しかった彼の父なのだと聞いた気がする。
口の中に出さない代わりに彼は僕の顔面に射精した。

行為が終わってから中華街を一緒に歩いた。細い路地に入り、中国人のおばさんから占いを受けた。
「お尻の穴に入ってたの舐めちゃうんだね…」
「ほら、ここ、生命線と運命線がM字に繋がっていると…」
手相を見てもらったけれど、彼の言った卑猥な言葉が頭の中でぐるぐる回り、結果はよく覚えていない。
最後にゲームセンターでプリクラを撮った。汚いセックスをした後、写真の中で子犬のようにきらきらと潤んだ目が、気持ち悪く滑稽だった。


彼がこの世界では名の知れた要注意人物だと知ったのは、それからしばらく経ってからだった。
〇学生にまで手を出して、出禁になっているお店があるだとか、付き合っていた子との仲がこじれて、会社にやりとりのメールを送り付けられただとか、性病持ってるだとか。
僕は彼の嫌な部分を見ることがなかったので、「あー良かった」と思ったけれど、つながっていたミクシィを解除すると攻撃的なメッセージが届いた。
あ、そういえばエッチな写真送ってもらってなかったなぁ、と彼のアカウントをブロックしながらそう思った。