エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

初夢

今年の初夢は「妹が泣いている」という夢だった。何で泣いていたのか、どういった状況だったのか詳しくは覚えていない。でも、頭の奥に微かに罪悪感の残る目覚めだった。


妹は結婚して子どもがいる。

夫と子ども3人で暮らし、両親も孫の誕生を喜んでいた。孫ができてから、両親も「早く結婚したほうがいいよ」なんて、あまり言われなくなった。

実家に帰ると、たまに妹も来ていてオーブンでケーキなんかを焼いていたりする。僕のために少し持ち帰れるように用意してくれている。実家にいたときは、だらしがなく特に家事もしていなかったが、今は料理も片づけもそれなりにしているらしい。
僕にとって妹は頼りないイメージだったのだけど、母親になって少しはしっかりしたのかもしれない。


僕は妹のことが嫌いなのだと思う。
嫌い…なのだろうか。よく分からない。


妹はお金を払えば誰でも入学できるような大学を卒業してから、就職してすぐに大学の同級生とできちゃった婚で結婚し、仕事を辞めた。
親戚から格安の家賃でとても広いアパートに住んでいる。
彼女の夫はおしゃべりで、いつでも軽い態度だ。正直何が良くて結婚したのか全く分からない。
子どもは可愛いとは思うけれど、犬や猫と同じで温かくて柔らかい生き物は大体そんなものだと思う。孫を両親は溺愛し何でも買い与えている。

 

僕が知らないだけなのかも知れないけれど何の努力もせずに、無条件に、幸せそうにしている
そう見える彼女のことがやっぱり少し憎らしいし、嫌いだと思った。

昔からそうだ。気に入らない。
僕は自分の中の女々しさをずっと周りから馬鹿にされ、矯正され憎んでいる。
女の子というだけで、女の子らしくあることで、勉強ができなくても、何もできなくても
周りからちやほやされ両親や親戚から可愛がられていた彼女が何の否もないのだとしても、僕はあまり好きになれない。

 

両親はとても凡庸で善良な人間だと思うけれど、やっぱり、もう分かり合うことなんてないんじゃないだろうか。家族でさえも僕は心を開くことはない、というか家族なんて全然絶対的な繋がりなんかじゃない。そんなもの信じない。もしそうなのだとしたら、それはそれ自体がそうであるが故に呪いみたいなものだ。
しかし、僕はもしこの文章を読んで家族が読んで傷つくことは少し怖いとも思うし、もしそうなったら悲しいとも思う。

上司に「もっと同僚と壁をなくして話してほしい」と言われたのだけれど、家族ともこんなに距離があるのだから、
他人なんてもっと遠いところにいるので無理だと思った。

…すでに変わった妹の苗字を僕は覚えていない。

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僕は僕が選んで一緒にいる人のほうがずっと信頼しているし、安心できる。

僕は今付き合っている恋人のことを愛していると思う。
一緒にいると温かい毛布にくるまっているように心地が良い。幸せだと思う。

僕と恋人の仲は二人の間だけで完結しているので、共通の友人や知人はいない。
僕と彼はまるで世界に二人きりだ。僕と彼以外には誰もいない。
世界に二人きりでも良いのだけれど、たまに誰かと世界を共有したいと思うこともある。

しかし、彼は僕の宝物なので、彼が誰かに傷つくようなことを言われたら、僕はその人のことを一生許せなくなってしまうだろう。

幸せというのは薄氷の上に乗っている。
一瞬の軽率さ、気持ちの揺らぎでその幸せが壊れてしまうのが怖い。

 

しかし、幸せになったからと言って、悲しいことがなくなるわけではなく、生きることは永遠に救いのない孤独なのだから、どうしようもなく、ただ当てもなくこの荒野をさまよい続ける他にないのだろう。