エモ捨て場

言葉にされない気持ちの墓場

あなたはあなたの関係者ですか?

「あなたはあなたの関係者ですか?」

 

スーパーで見たことあるおばさんとすれ違ったのだけれど、あれは誰だったのだろう。
色々思い返すのだけど、結局思い出すことができなかった。
ただの気のせいだったのだろか。夢の中の出来事だったのかもしれない。
余生のようにただ過去に起きたことを思い出す日々が生み出した妄想だったのかもしれない。

 

 


「あなたはあなたの関係者ですか?」

最近、好きなアーティストのイベントに行った。
とても楽しかったのだけれど、こうしたものに参加するといつもどこか虚しい気持ちになる。
なぜ、自分は何も作れない人間になってしまったのだろう。
そして、ここに集まる人たちはそんな人達の集まりで、何者にもなれない人たちだけが集まっていて、
好きは好きだけでそれだけで尊いのだけど、でも、そのアーティストと何か近づける訳ではないし、
結局僕たちは自分の人生をどうにもできずお互い無関係なだけ、ただ無関係なだけだね。

 

 


「あなたはあなたの関係者ですか?」


ジャンプとかも、好きで毎週買って読んでアンケートまで出しているのだけど、何か寂しいんだよね。
ONEPIECE」とか素晴らしく面白いのだけど、それが自分の人生にとって何になるのだろう。
才能がないと、努力も勝利も友情も得られないんだねって思ってしまう。
何の才能もない、お金もない、そのまま大人になった僕には何の関係もないと思ってしまう。
あ、だから大人になるとみんな漫画とか読まなくなるのかな。

 

 


「あなたはあなたの関係者ですか?」


大学時代の友達、結構ちゃらんぽらんだったのだけど、
文学が好きで、「失われたときを求めて」とか「ジャンクリストフ」とか分厚い全集をいつも読んでいて、毎日のように話していた。
就職のときに彼は意外にも商社に就職した。
彼がなんで商社を選んだのか、何か唐突に社会の役に立ちたいだとかなにか取ってつけたような理由を言っていたような気もするし、
何かちゃんと話をしたような、そうでもないような、つまりはっきり覚えていない。
大学を卒業してから何度か一緒に飲みにいったのだけど、話していくなかで彼と僕との給与の差が大きすぎて、とてもショックだった。
格差ってこうやって生まれていくんだね…。
就職するときは好きなことができればいいやと思っていたけど、やっぱりそうでもないのかな、とかもう今でも分からないのだけど…。
彼とはたまに電話とかで話したりするのだけれど、今年彼女と結婚するらしい。

普通になれていいなぁ。羨ましいなぁと思った。
僕たちはどこか、誰にも救えないような孤独な気持ちをどこか共有していたと思っていたけれど、いつの間にかそうではなくなっていた気がする。
もう僕は彼と何も共有できることがないような気がして、もうダメなのかなと思う。
普通に結婚して、普通に子どもが生まれてこれから順風満帆な幸せな家庭を築く彼と、
このまま一生結婚もせず、子どもも生まれず、これからの人生どうしていけばいいのか分からなくなっている僕では、
もう人生の線が交わることはなくなってしまったんじゃないかと思う。

 

 


「あなたはあなたの関係者ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とっても大きな気持ちを小さなコップに注ぐと溢れ出してしまうもの、それが涙」
(『紀子の食卓』)